椎葉の正月行事

メージョウ
シシツリ

新春、年始の儀礼は大晦日から始まります。各家で門松を立て、屋内も注連縄を張り正月飾りを整えたあと、山の神・火の神・水神・荒神などに御幣を捧げます。

元旦、家の主は家族の誰よりも早く起床し、若水を汲みに出かけます。この時、寝室の戸を開けるときの呪文、着物に袖を通すときの呪文などを唱えます。

正月十四日の小正月の前日をコドシと呼び、メージョウ(餅花)が作られます。柳の枝には稗餅や粟餅のほか、稗や粟なども吊り下げます。焼畑で栽培される作物が豊作であるように祈る行事です。

小正月に餅花を飾る習慣は全国的に見られますが、椎葉では焼畑で栽培される雑穀の民俗が生きているのです。

また、猟師の家ではこの日、猪が捕れると、家の前にシシツリと称して猪を吊り下げ、メージョウを飾って祝う習慣があります。これらは椎葉ならではの小正月の行事なのです。

鬼火焚き

正月6日をムイカ、モロメギといって、屋内外の譲り葉で飾ったところにモロメギ(いぬがや)の葉とダラ(たら)の枝を2つに割ったものを付ける。

7日の早朝から夕方に、モロメギとダラを外し、竹と共に燃やす。これが鬼火焚きである。モロメギは鬼の眉、ダラは金棒と伝えられ、悪魔祓いとして燃やされる。

川の口では7日「蘇民将来大福長者子孫不老門」と書いた護符を家の柱に張り、これと文言を少し短くした札を子どもの肩にいったん付けた後、この札を燃やすことが行われた。

もぐらうち

正月14日、コドシの晩に子ども達によって行われる行事。田畑からモグラを追い出す行事と説明されるが、本来は土地を叩くことによって大地の霊を鎮め、収穫をより豊かにと願う行事です。

もぐらうちと呼ばれるのは九州では一般的で、他の地方では「鳥追い」と呼ばれるところが多い。

椎葉では土地を叩く棒をホテと呼び、不土野地区ではフジカズラ、尾手納地区ではフジカズラにワラを巻き付けたもの、松尾地区ではワラで作られたものと地区によって材質が異なります。

椎葉の春祭り 的射

椎葉では、春祭りとして的射が行われます。的射とは、奉射神事のことで、一年間の災厄を避けるために行われます。

正月から春にかけて全国的に奉射神事が行われますが、椎葉の的射もその流れを汲むもので、ここには「神の的」という特殊な的が作られるのが特徴的です。それぞれの地区で矢を的に射る儀式は違います。神の的の儀式の後には、村人全員が複雑な作法や口上が飛び交いながら的射を楽しみます。春節や的射節などもこの時に歌われるのです。

春祭りは、家族や村に一年間災いが来ないように祈願するための大事な祭りなのです。